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午後23時、アメリカ南部にて
アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する筆者が当地にて感じた様々な事柄をお伝えします。
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続・ローマ法王の退位とラティーノ
今週は、ほとんど自己満足で書いているこのブログが、アメリカ南部とその南に大きく広がるラテンアメリカ世界の今を、多少なりとも先取りできていたことが素直にうれしかったので、2週間前の記事の続きを書いてみる。(ラテンアメリカ世界から、初めてのローマ法王が誕生するかもと書いた記事のことです。)

13日、オフィスで隣に座っているいつも明るいアメリカ人の同僚が、「ついに白い煙が上がったぞ!」と叫んだ。日本で白い煙と言っても火事か何かと思うだけだが、この時誰もが気にしていたのは、バチカンのシスティナ礼拝堂から白い煙が上がること(=新しい法王が決まったことを意味する)だった。誰もが仕事を中断して、ネットのニュースをチェックする。そして、その後各通信社が一斉に発信した続報は驚くべきものだった。何よりも僕が驚いたのは、僕の前に座っているいつも厳しいアルゼンチン人の上司が、見たこともないような満面の笑みを浮かべていたことだったのだが。

そう、新しいローマ法王には、アルゼンチン人のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(76)が選ばれた。直前のニュースでも、次の法王は非ヨーロッパ世界から生まれるとの見方が強まっていたとはいえ、候補と見られていたのは、ブラジルとガーナの枢機卿であり、この決定はかなりの驚きをもって迎えられた。

ここ数日の各種報道を総合すると、今回のアルゼンチン人の法王選出には、苦悩を強めるカトリック教会の思惑もあるようだ。カトリック教会としては、ただでさえ現代社会における宗教の相対的影響力の低下がある中で、最近はアメリカでも相次ぐ枢機卿等による少年への性的虐待等、イメージを悪化させる各種のスキャンダルに苦しんでいる。その点、現在の世界で、カトリック信者の4割はラテンアメリカ世界におり、アメリカのラティーノも含めると、おそらく信者の半数近くに及ぶと思われる。そして、ラテンアメリカ世界の熱心なカトリック信者には、経済的に貧しい人たちが多い。つまり、カトリック教会の影響力回復には、ラテンアメリカ世界の貧困層へのアピールが、有効な戦略というわけだ。

そうした状況を踏まえて、新たなローマ法王となった、フランスシスコ1世は16日の最初の謁見でも、「貧しき人々のための清貧なる教会(スペイン語では、Una Iglesia pobre y para los pobres)」という方針を打ち出している。そもそもフランシスコという名前も、12世紀末の中世イタリアで、初期の宗教改革の一つとして知られ、所有の否定を唱え、厳格な清貧生活を送った聖フランシスコ(アッシジのフランシスコとも呼ばれ、江戸時代初期の日本にも宣教に訪れたフランシスコ会の創始者)から来ているものだ。アルゼンチン人の上司によると、ベルゴリオ枢機卿は本国アルゼンチンでも、長年にわたる貧困者への支援と、自身の貧しい生活ぶりで有名だったという。

その意味では、ラテンアメリカ世界の中でも、彼の故郷であるアルゼンチン自体も、抜本的な貧困層対策が求められている国だ。長く続く経済的低迷とそれに伴う貧困層の増加により、アルゼンチンのフェルナンデス政権は社会主義的色彩を強めており、昨年の石油会社YPFの一方的な国有化(それまでスペインの石油会社レプソルが過半の株式を保有していたもの)は世界に衝撃を与えた。最近アルゼンチンが権利主張を強めているフォークランド諸島(アルゼンチン側の呼称はマルビナス諸島)についても、新法王の誕生に先立つ12日の住民投票で、反対票3票という圧倒的多数の賛成で、イギリスへの帰属への賛成が示され、更にアルゼンチンの国際的立場を難しいものにしている。

今週の後半は、ラテンアメリカはもちろん、マイアミやヒューストン等、ラティーノが多いアメリカ南部の都市でも、ラテンアメリカからの新法王の誕生を喜ぶ人々の姿がそこかしこで見られた。現代の聖フランシスコとも言うべき、フランシスコ一世が、ラテンアメリカ世界、そして、アメリカのラティーノに何をもたらすのか、今後も見つめていきたい。


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Author:タツヒコ
アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する商社マンです。

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