FC2ブログ
午後23時、アメリカ南部にて
アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する筆者が当地にて感じた様々な事柄をお伝えします。
02 | 2013/03 | 04
S M T W T F S
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -

太る自由とアメリカ南部
同じアメリカといってもテキサスからは遥か遠いニューヨークで3月12日、ニューヨーク州裁判所は、レストラン等での16オンス(約470ミリリットル)以上の大型砂糖入り飲料の販売を禁止したブルームバーグ市長の措置に対して、実行の差し止めを命じた。ニューヨーク市側はすぐに控訴し、それ以来報道等では、"FREEDOM TO BE FAT"「太る自由」が議論になっている。砂糖まみれのジュースを飲んで太るかべきかどうかまで、とやかく言われる筋合いはないと言うわけだ。

この話題に関する報道を見る度に僕は、こんな規制がテキサスで実施されたら、暴動が起きるんじゃないかと余計な心配を感じてしまう。一度も行ったことはないので若干イメージを含むものの、ニューヨークと言えば、電車通勤どころか、ランニングやロードバイクで颯爽と通勤する人々も多く、レストランも和食などのヘルシーな食事も人気だと思われる。そもそも太った人は街にあまり見かけないイメージだ。

その点、我らがテキサスを含むアメリカ南部は、移動はすぐ近所のスーパーに行くにも車が基本、食事は高カロリー高脂肪の食品が中心で、名物といえば、ステーキやチキンウイングなど。砂糖入り飲料についても、16オンスどころか、32オンスの入れ物に好きなだけリフィル(継ぎ足し)するのが当たり前だったりする。(余談だが、当地では、コーラはダイエットコークやコカゼロの方が人気だが、コーラの糖分を薄めても、量をたくさん飲めば本末転倒だと常々思っている)。その結果、街には、老若男女を問わず、太った人が本当に多い。もし、幾多の反対を乗り越え、ニューヨークの規制が本格化して、コーラ好きの人達がニューヨークに住めなくなったら、「みなさん、テキサスに来て、太る自由を謳歌して下さい!」と言いたいくらいだ。

ただ、もう少しよく考えてみると、実際には、テキサスにしても、「太る自由」を享受し続けられない可能性もある。ここで、「太る自由」があるとして、それはどんな性質のものなのかについて少し考えてみたい。

まず、太る自由とは、「最大多数の最大幸福」という言葉で有名な19世紀の自由主義の哲学者、ジョン・スチュアート・ミルが論じた「愚行権」の一種に位置づけられるだろう。他人がその行為を賢明だと思わないからといって、何が自分にとって幸福なのかを決めるのは自分であり、個人の行動に対して、他人(特に政府)に干渉される言われはないというわけだ。一方で、太る自由が、同じく愚行権の文脈で議論の的になっているマリファナ解禁論などと性格が異なるのは、現代の福祉国家の観点からは、それが社会保障の問題と深く結びついている点にある。

例えば、ニューヨーク市の措置は、何もブルームバーグ市長が個人的に「太ることは罪悪だ」という倫理観を持っているではなく、氏が掲げる公衆衛生の改善という政策、ひいては、改善の結果としての、市の社会保障費の削減がその背景となっている。砂糖飲料の過剰摂取によって肥満が増えれば、成人病の割合も増え、結果として行政が負担する社会保障費の割合も増加するというわけだ。その点でいえば、反発も強いオバマ政権の医療保険改革「オバマケア」のもと、メキシコからの移民を含めて、公的医療保険の補助を受ける低所得者層を比較的多く抱えるアメリカ南部でこそ、「太る自由」が槍玉に挙げられ、何らかの食料品の提供に制限がかかってもおかしくないのだ。

とはいえ、今のところアメリカ南部でそんな動きはないし、この保守的な風土でそうした政策を実行するのは困難だろう。
だから、今日も僕は、ラージサイズのビッグマックセットを頼む。何しろここは全てが大きいテキサスなのだから!

Mac.jpg

スポンサーサイト





プロフィール

タツヒコ

Author:タツヒコ
アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する商社マンです。

カテゴリー

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

ブログ内検索

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード