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午後23時、アメリカ南部にて
アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する筆者が当地にて感じた様々な事柄をお伝えします。
08 | 2013/09 | 10
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絆(キズナ)-東北のために僕達ができること-
LIGHT UP NIPPONというプロジェクトがある。2011年3月11日に起きた東北大震災の5ヵ月後に当たる8月11日、未曾有の地震と津波にみまわれた東北の被災者の方々に、ふたたび明日へと歩み始めるきっかけを作り続けたいという思いのもと、北は岩手から南は福島まで、東北の太平洋岸の町々で一斉に花火を打ち上げようと思い立った若者たちのプロジェクトだ。本来花火が持っていたという「追悼」と「復興」の意味を込められた花火は、その日生きるのが精一杯だった生活の中でも、希望や喜びを感じたいと考える地元の有志の人々の協力により実際に多くの場所で打ち上げられ、たくさんの人々に大きな感動と明日を生きる力を与えたのだった。花火に至るまでの若者たちと地元の関係者の方々の献身的な努力は一本のドキュメンタリー映画としてまとめられている。

今週、ヒューストンの中心部に位置するアジアンソサエティで、そのドキュメンタリー映画「LIGHT UP NIPPON」の上映会が行われた。折りしも週の前半には、CNN等の主要メディアで、福島第一原発からの汚染水の流出が盛んに報道されていて、ここヒューストンでも、東北大震災は、「フクシマ」はまだ終わっていないという印象を与えていた時期だった。防護服に身を包んだ多くの作業員の方々が施設内で働く映像は、2020年のオリンピック開催地の選出を直前に控える中で、「日本」という国全体に対していくばくかのネガティブなイメージを与えていたと思う。

そうしたこともあってか、開始時間になっても、会場には空席が目立っていた。しかし、いざ映画が始まると、会場に集まっていたアメリカ人も日本人も、花火の打ち上げに希望を見出そうとする関係者の方々の情熱に涙を抑えることができなかった。復興作業の中で肉体も精神も追い詰められているはずなのに、花火の伝統を絶やすまいと奔走する人々の行動力は、同じ日本人として誇りに感じずにはいられない。そして、映画の上映の後には、さらに僕の心を打つ出来事が待っていた。

映画の後には、地元福島の福島大学から、インターンシッププログラムに参加してヒューストンに滞在している学生たちによるプレゼンテーションがあったのだ。日本人もいれば、モンゴル、中国、マレーシアからの留学生もいる。彼らは学生とは思えない様な堂々とした振る舞いで、それぞれの視点から、地震の被害の凄まじさ、東北の現状、復興に向けての取り組み等を説明していく。印象深かったのは、中国からの留学生だという女性が、地震の後、日本人がいかに復興に向けて団結していたかを説明していた場面で、彼女はそうした姿を象徴的に現すものとして、「絆(キズナ)」という言葉を挙げ、「コネクション」と訳していた。

震災から早2年半が経ち、特に、大きな被害に見舞われた東北以外に住む人々の間では、日本人であっても、震災の記憶の風化は否定できないと思う。ましてや、日本を遠く離れた海外に住む僕らはどうしても最新の状況から遠ざかってしまう。しかし、それでも僕らに「絆」を保つことはできないのだろうか?

プレゼンテーションの後、つい先程奇麗な発音の英語でプレゼンテーションをやり遂げたばかりの学生の一人と話す機会があった。聞けばまだ20歳になったばかりだという地元福島出身の彼は、今回が初めての海外だということで、10年前の自分と比較してはるかに立派な姿に驚いてしまう。ヒューストンに来て多様な人々がともに暮らす姿を目の当たりにし、いかに自分の世界が広がったかをうれしそうに語る彼に対して、僕は「海外にいる日本人に、何かやってほしいこと、知ってほしいことがありますか?」と聞いてみる。すると、彼はこう答えたのだ。

「今、福島では多くの人々が震災にも原発にも無関心なんです。多くの人々は日々の暮らしに追われ、原発事故はもう終わったかの様に思っている。でも実際には、未だに事故現場で働く多くの作業員の人達がいる。震災も原発事故も終わってはいない。それを知ってほしんです。」

地元の福島の人々ですらそうした傾向があるのなら、他の多くの日本人、更には外国人にとっては震災からの心理的距離はさらに遠くなってしまうだろう。そして、今回の汚染水流出に関する報道の様に、ふとした時にネガティブなイメージが喚起されると、それは震災に対するあいまいな記憶とも結びつき、より大きな不安感を喚起しうる。それであるならば、と僕は思う。それであるならば僕は、海外にいる中でも、震災や原発事故に関する正しい最新状況の把握に努めよう。そして、他の国の人々から問われた時、一人の日本人として、そうした正しい状況を説明できる様にいよう。それが素晴らしいプレゼンを疲労してくれた若者たちに対するせめてもの恩返しだ。

2011年8月11日、東北の各地で同時に打ち上げられた花火は、復興の最中にあった各被災地の人々の心をつなぎ、人々の絆を目に見える形にしてみせた。更に2年の時が経ち、海を超えて東北の今を異国の人々に伝えようとする若者たちがいる。そうしてもたらされた絆を絶やさぬ様にするのが、海外に住む日本人の役目だと思う。

貴重な機会を提供して下さったアジアンソサエティー及び総領事館の皆様、素晴らしいプレゼンを披露してくださった福島大学の学生の皆さん、本当にありがとうございました!

↓LIGHT UP NIPPON公式サイト(ドキュメンタリーは下記の公式サイトからも見れます。)
http://lightupnippon.jp/index.php

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Author:タツヒコ
アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する商社マンです。

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