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午後23時、アメリカ南部にて
アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する筆者が当地にて感じた様々な事柄をお伝えします。
10 | 2013/11 | 12
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グルメの街ヒューストンと呼ばれて
何ヶ月前にこのブログで、ヒューストンが「文化と食の街」という理由で、ニューヨークタイムズが選ぶ「今年訪れたい観光地ベスト46」の中で第7位に選ばれていたことを紹介した。(http://www.nytimes.com/interactive/2013/01/10/travel/2013-places-to-go.html?_r=1&)その後、「文化都市ヒューストン」としての姿は、このブログでも折に触れて何度も紹介してきたつもりだけれど、そういえば「食」の方にはその後触れていなかったので、今回改めて紹介してみたい。

日本からの訪問者がある度に頭を悩ませるのは滞在中の食事だ。滞在が短期間であれば、日本の皆さんの「カウボーイのテキサス」というイメージに答える形で、ステーキハウスにお連れして、日本では考えられないサイズの特大ステーキを食べて頂くのが定番だ。また、もう何日かあれば、同じくテキサスの定番料理のテキサスバーベキューや、お隣のルイジアナの料理であるケイジャン、メキシコ料理がテキサスで独自のアレンジを加えられたものであるテックスメックスなども楽しんでもえらる。

ただ、こうした料理はどちらかというと豪快で素朴な味付けが魅力で、舌の肥えた日本の皆さんに、「こんな洗練された料理は食べたことがない!」と言ってもらえる様なレストランは余りない。しかし最近では、石油ガス産業の好況もあってか、グルメなヒューストニアン達の需要に応える形で、非常に凝った味付けや盛付のレストランが登場しつつある。ニューヨークタイムズが紹介しているUnderbelly、Uchi、Oxheartの3店はその代表例だ。

まず、Underbelly。ヒューストンの中で最もオシャレなレストランが軒を連ねる、MontroseとWestheimaerが交わるエリアにあるこの店は地元生まれのオーナーシェフ、クリス・シェパード氏が自信の理想を体現したお店だ。メニューは大皿料理が10数品しかないシンプルな構成となっており、しかも素材の供給状況に合わせて、週単位で頻繁に変わる。ヒューストンでここでしか見たことがないのだが、一部のメニューには、使われている肉や野菜がどういった農家や牧場で作られたかが、生産主の写真入りで紹介されていて、シェフの素材への強いこだわりが感じられる。

ジャンルとしては「ニューアメリカン」に分類されていて、南部の伝統的な肉料理をベースとしているものの、味付けは他とは比較にならない程に複雑で繊細な味付けになっており、盛付も鮮やかだ。それでいて、様々な人種、民族を抱える多文化都市、今やアメリカ一の貨物扱い量を誇るヒューストン港を有する国際港湾都市としての立地を活かし、世界の様々な料理からインスパイアされた味付けも見られ、特に日本料理と韓国料理からの影響が強い様に思える。個人的には、この街でで他であまり見ないヤギ肉の各料理がおススメだ。

underbelly.jpg

次にUchi。Underbellyのごく近くに位置するこの店は、名前から想像がつく通り、オーナーシェフであるアメリカ人タイソン・コール氏による日本料理とアメリカ料理のヒュージョンのお店である。日本人にとっては、ヒューストンに数多くある日本人以外のオーナーが経営する日本料理店は「残念」な味なことが多く、色には鮮やかだが何が入っているかわからない巻き物にがっかりさせることもしばしばだ。だが、このUchiは、日本料理のアレンジもここまで本気でやれば、全く異なる別のジャンルとして評価できるという素晴らしい例だ。

味付けは、多くの場合日本料理とは若干異なるものの、様々な素材や調味料からなる重層的な味で、別のジャンルだと思えば非常においしい。シーフードを中心としたメニューは、その素材の多くを日本の築地や福岡から直送で取り寄せており、ここのシェフのこだわりも相当なものだ。そして、どの料理も凝った盛付で、見た目にもすごく美しい。日本料理や日本文化は日本人にしか理解できないと思っている人にこそ、この多文化都市で生まれた「日本文化の一つの進化」をぜひ試してほしいと思う。個人的にはフォアグラのお寿司が絶品でした。

uchi 1

uchi 2

二つのお店に共通するのは、素材に対する徹底したこだわりと、素材をもたらす自然環境への配慮、そして、異なる食文化に対する極めてオープンな姿勢である。思えばこうした料理は、今やアメリカで最も多文化的と言われるヒューストンでこそ生まれるのかもしれない。異なる文化の共存は、少なくとも食文化という形では、こうした洗練された新たな価値を生み出した。それでは、社会としてのヒューストンがどこに向かっていけるのか、それは素材である僕達一人一人が「様々な味が調和したハーモニー」を目指して、日々体現していくことなのだろう。

なお、三店目のOxheartを訪れるのは事情があってしばらく先になりそうです。
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大人の社会化見学 in Houston / 石油化学プラントツアー
ここヒューストンは色々な言葉で形容されている。例えば、宇宙産業の街、最先端医療の街、アートとグルメの街、全米でも最も人口流入の激しい街の一つ、などなどだ。それでもやはり、ヒューストンに住む者にとっては、「石油ガス産業の街」という表現が最もしっくりくるだろう。その象徴としてこの街は東の郊外に、全米最大の石油化学プラント群を抱え、しかもシェールガス革命の結果としての空前の石化産業ブームにより、そのプラント群はものすごい勢いで拡大している。今回、関連企業に勤務されている友人の行為で、そうしたプラント群を巡る機会を得たので、感謝の気持ちを込めて、ここでその様子の一部を書いてみたい。

まず最初に訪れたのは、アメリカの石油化学企業であるLyondellBasell社のエチレンとポリエチレンのプラント。複雑に配管が張り巡らされたこのプラントは、戦場での不動の要塞を思わせる存在感を誇っていた。このプラントだけで、年間80万トンのエチレンを生産しているという。下の写真に見えるのは、多くの石化製品の元となるエタンをクラックするエタンクラッカー。ヒューストンの石化産業の象徴とも言える設備だ。

plant 2

また、プラントの血液とも言える冷却水を製造するクーリングタワーも見えた。空の雲と、タワーから湧き上がる水蒸気が渾然一体となっているのがいかにもヒューストンらしい風景だ。

plant 1

次に訪れたのは、ヒューストンの東ベイタウンにある、世界最大の石油会社ExxonMobilのリファイナリー(製油所)と石油化学プラントのコンプレックス。石油化学プラントに近接して製油所を設けることで、プラントの原料となる芳香族炭化水素などを効率的に供給することを狙っているものだ。ベイタウンの広大な敷地に製油所から化学プラントに至る数多くの設備が点在する様は圧巻だった。下の写真の左側に見えるのは、そうした諸々の過程で発生する余剰ガスを焼却して無害化するための設備、フレアスタック。かなり見にくいけれど、プラントの象徴とも言える炎「フレア」が上がっているのが見える。フレアの炎の鮮やかさは、この産業が扱っている石油化学製品が持つ危険なまでのエネルギーを示しているかの様だった。

plant 3

ただ、何と言ってもプラントが秘めている膨大な力を目の当たりにさせられるのは夜のプラント群だろう。夜のプラント群は操業上の必要により数多の照明によって照らされていて、一見するとクリスマスのイルミネーションと見まがう程に色とりどりの光を放っていて、ふと「美しい」という感情を抱いてしまう。ただ、驚いてしまうのは、輝くプラント群の上空に目を向けた時だ。プラントから排出され空に広がった煙がプラントの照明に照らされて、空がオレンジ色に輝いているのだ。その様は時に幻想的に、時に不気味にも見える。

plant 4

以前このブログで、ヒューストンで見る太陽が大きくて美しいのは、この石油化学プラント群から排出される微粒子が、空気中で太陽の光を屈折させる結果だと書いたことがある。この夜のプラント群もそれと似ていて、関わりのない人が見れば、数年前の日本で流行っていた様に、夜景を前に恋人達が語らうちょっとしたデートスポットに向いていると思うかもしれない。ただ、僕達ヒューストンに住み、何らかの形で石油ガス産業に関わっている者たちは、そうした一見した美しさから、自分達が関わっている産業が、地域の環境に対してどれほど大きなインパクトを持ちうるかを自覚すべきだと思う。そして、それでも石油や天然ガスが、エネルギーや石化製品という形で、全体としては社会に対してプラスの影響をもらたしていることを信じるしかないだろう。


Tさん、本日は素晴らしい企画をありがとうございました!本当に勉強になりました!!

ヒューストン(周辺)観光ガイド⑤フォートワース現代美術館
ヒューストン「周辺」と題した通り、今回紹介するスポットはヒューストンではなく、ヒューストンから車で4時間の都市フォートワースにあります。しかし、個人的にあまりにお勧めなので、ここで紹介してみたいと思います。現代アートを、安藤忠雄氏の建築を、自分の限界に挑戦しようとする全ての人達に自信を持って紹介したいスポットです!

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安藤忠雄という日本人がいる。言わずと知れた世界的に有名な日本人建築家だ。独学で建築を学んだ氏は、20代半ばで4年間にわたる世界放浪の旅に出て、「生きることに意味はあるのか」を問い続けた。帰国後、コンクリートの打ちっ放しと幾何学的なデザインを多用する独自の作風を確立した後は、国内外で数々の作品を発表し、長きに渡り、世界的に非常に高い評価を受け続けている。最近の国内における作品では、東京の表参道ヒルズや、副都心線の渋谷駅、香川県の直島における一連のプロジェクトなどが有名だろう。

そんな安藤忠雄氏が手がけた作品がここテキサスにもある。ヒューストンから北西に4時間のところに位置する都市フォートワースで、2002年に完成したフォートワース現代美術館だ。氏の建築らしく建物本体にはコンクリートが多用され、屋根を支えるY字型の柱が設計全体に力強さを加えている。氏としてはこの美術館において、彼を象徴する素材であるコンクリートにテキサスの過酷な自然から美術作品を守るという意味も込めているという。そして圧巻なのは、建物のほぼ半分を囲む様に設置された大きなプールで、プールに張り出した柱やテラスの効果で、外側から見ると、まるで建物全体がプールの上に浮いている様な錯覚に襲われる。

こうした独自の設計はどんな発想から生まれるのだろう?安藤忠雄氏といえば自らの生き方を「ゲリラ」と表現し、ストイックな生き方を追求してきたことで知られており、自分の生き方についてかつてこう語っている。

「最初は誰も相手にしてくれませんでした。社会が認めてくれない。「今月は生きていけるだろうか?」という常に追い込まれた状態の中で仕事をしてきました。しかし、人間、極限まで追い込まれて初めてたどり着く境地があります。ひとたびその境地を経験した人は、瑣末な事柄にとらわれない、大局的な視野を持つことができ、どんなときでも平常心を保つことができるのです。」

フォートワース美術館の、極限まで迷いなく研ぎ澄まされた設計からは、自らを追い込み続けた結果としてたどり着いた氏の境地がにじみ出ている様に思う。

思えば、現代アートそれ自体も、芸術表現が全て尽くされたとも思える危機的な状況の中で、自分を極限まで追い込み、それでも新しい芸術表現を生み出そうとするアーティスト達の努力の結晶だ。この美術館の魅力はもちろん建築だけではなく、アンゼルム・キーファー、リチャード・セラなど現代アートの求道者たちの大作たちがその内部に展示されている。全体としては、1960年代からアメリカを中心に模索されてきた抽象表現主義(Abstract Expressionism)に関連する作品が多く、その意味では、同じく抽象表現主義の傑作であるヒューストンのロスコ・チャペルとセットで見て、「テキサスにおける現代アート」を体験してほしい美術館でもある。そして、安藤忠雄氏の広々とした空間設計が、個々の作品が持つポテンシャルをより引き出している様に感じられるのも見どころの一つだ。

自分を極限まで追い込んでこそ得られる境地。それが何なのか、少なくともそのヒントがここにはある。現代アートなんて難解すぎて、という人であればこそ、難しいことは考えずに、極限的な生き方のいくつかのあり方、それを垣間見る機会のつもりでぜひ訪れてほしいと思う。

Fort Worth 4

Fort Worth 6

Fort worth 5

Fort Worth 2

Fort worth 1

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フォートワース現代美術館(Modern Art Museum of Fort Worth)
themodern.org/
Address : 3200 Darnell St, Fort Worth, TX 76107 アメリカ合衆国
Tel : +1 817-738-9215

ヒューストン日米協会45周年パーティーに寄せて
昨日当地で開催されたヒューストン日米協会(JASH)の45周年記念パーティーに、日米協会の方からご紹介頂くという非常に光栄な機会を頂いた。御厚意に対する自分なりの感謝の意味も込めて、昨日のパーティーのことについて書いてみたい。

日米協会は、当地で暮らす方はご存知の通り、日米の相互交流に関しては最大の規模を誇る非営利団体で、ビジネス、文化交流、教育等の分野で、様々なイベントやプログラムを実施している。そのこともあり、昨日のパーティーには45周年を祝うために、日本とアメリカ側の双方から、当地の主要な企業や組織の代表の方が集まっており、急遽レンタルしたタキシードで身を固めた僕は、借りてきた猫の様になっていた。そして、総領事など当地の代表者による挨拶の後、今回のパーティーのために遠方より駆けつけてスピーチをされた二人の人物の力強い言葉に、僕は更なる気後れを少し感じる一方で、より強く、この土地で頑張っていこうという決意を改たにさせられたのだった。

一人目は、アメリカ側より、トーマス・シーファー元駐日アメリカ大使。2005年から2009年まで駐日大使を勤め、当時ニュース等でもよく名前を聞いた人物だ。恥ずかしながら知らなかったのだが、テキサスとは非常に関係が深く、そもそもテキサス州フォートワースの生まれであるシーファー氏は、テキサス大学で学んだ後、テキサス州下院議員の職を3期勤め、またビジネスの世界でも、いまやダルビッシュを抱えるテキサス・レンジャーズの誘致に中心的役割を果たすなど、常にテキサスと供に生きてきた様な人物だ。

シーファー氏はアメリカ人らしく時にユーモアを交えて日米関係についてスピーチしていたが、駐日大使時代に自信が深く関わった在日アメリカ軍再編について触れた時は、こちらが圧倒される程の勢いで、こう自分の主張を表明していた。

「いまや在日アメリカ軍は日本の地域社会にとって重荷であるという人がいますが、北朝鮮その他の脅威を抱える日本や東アジア諸国の安全保障にとって、アメリカ軍の存在、そして日米安保のパートナーシップは不可欠なのです。東アジアに限らず、アメリカは世界の圧政に苦しむ人々に対して、民主主義や経済的繁栄をもたらし続けてきたのです。」

パーティーに出席していた多くの日本人を前にして、ここまで淀みなくアメリカ的価値、アメリカ的正義を体現できることには、日米安保に関する考え方の違いは抜きにしても、大いに感銘を受けたのだった。

そして、対する日本側のスピーカーとしてシーファー氏に続いてスピーチを行ったのは、三菱商事の元社長で現特別顧問の槙原稔氏。ハーバード大学を卒業後に1956年に三菱商事に入社、長年水産物の取引に関わった後、米国三菱商事の社長や本社の社長を務めた人物で、引退後も、企業の社外取締役や文化団体の理事として精力的な活動を続けている。御年83歳とは思えない堂々とした口調で、最近の黒田総裁による日銀の金融緩和など、日本の最近の経済・社会状況について解説されていた。

ただ、僕が最も印象に残ったのは、槙原氏がスピーチの後半で日本の将来について触れた時の発言だ。槙原氏はおもむろにこう語った。「日本にはまだまだ活用できていない「女性」という大きな資源があります。」水産物の取引については詳しくないものの、商社の世界は残念ながら、まだまだ強固な男性社会だと思う。その商社の世界の本流を長年生きてきた槙原氏が、このアメリカという土地で、極めてアメリカ的なスピーチの後に、そうした発言をしたことには大きな意味があったと思う。ちょうど、パーティーには槙原氏が言う女性の力を代表する人物からもメッセージが寄せられていた。現ヒューストン市長で、同性愛者であることを公言しているアニス・パーカー氏だ。

本当に、2013年の現在でも、日米関係は僕達日本人にとって、最も重要な二国間関係の一つだと思うし、日本とアメリカのそれぞれがお互いから学べることはまだまだあると思う。そして、アメリカ南部という保守的な地域の中にあって、エネルギーブームや規制の少なさに支えられた好景気の中で、より存在感を増しつつあるテキサスという場所、この地でそうした二つの国の相互理解に尽力されている日米協会の活動に改めて感謝の意を表したい。

写真はボランティアの皆さんによる花笠踊り。

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Author:タツヒコ
アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する商社マンです。

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