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午後23時、アメリカ南部にて
アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する筆者が当地にて感じた様々な事柄をお伝えします。
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そこがルイジアナである証拠に
大学一年生の冬、初めて海外に出かけ、陸路でタイとカンボジアの国境を越えた時のことを今でも僕は忘れられない。タイの首都バンコクを出た長距離バスは、ガンガンにクーラーを効かせながら、奇麗に整備された片側三車線の道路の上を、カンボジアとの東の国境におけるタイ側の街、アランヤプラテートに向かって、グングンと走っていく。車内には、裕福そうなタイ人たちとうつろな目をしたカンボジア人が半々くらい。僕はこのタイ人たちも国境を越えて更に進み、僕の目的地である遺跡、アンコールワットがあるシェムリアップに行くのだろうかといぶかしんでいた。その内にアランヤプラテートに着いたバスは、カンボジアとの交易で栄える市街を抜け、国境ゲートに到着する。

バスを降りて国境通過の手続きをし、カンボジア側の街ポイペトに足を踏み入れた僕は目の前の光景に我が目を疑った。さっきまで日本とほとんど変わらない程だった立派だったタイ側と比べて、カンボジア側の道路は、まるでニュースで見ていた中東の紛争地の様に、そこらじゅう穴が空いていて、左右の建物がどれも朽ちかけている。そしてすぐに僕の周りには、汚れた服を着た子供たちがお金をせびりに群がってくる。初めて陸路で国境を越えた僕は、国境という人間が決めた境界を境として、余りに世界が異なることに愕然としたのだった。

そして、タイ側と違って、まともな商業活動が行われているとは思えない通りを抜け、シェムリアップ行きの乗り合いタクシーの乗り場に向かう手前にそれはあった。周囲の光景とは似ても似つかないくらい豪華で、周りを威圧するように立つ巨大な建物。カジノだ。後で聞いた話では、当時、タイ人にとって国境のカンボジアの街といえば、タイではできないカジノで豪遊をする場所であり、週末ともなると、急成長を遂げる経済の中で集めた大金を持ったタイ人の金持ちたちが、大型バスに乗って集団でやってきていたという。

国境を抜ければそこはカジノ、そのイメージは、新たな時代を作っていこうとする活気と、その時代に取り残されてしまった絶望とのギャップの大きさと一緒に、僕の中に、深く刻まれたのだった。それから11年、まさかそのイメージがこのアメリカ南部で呼び起こされることになろうとは、僕は全く予期していなかった。

この週末、僕はテキサスの東の隣の州、ルイジアナに向かった。たまには運試しもいいだろうとテキサスとの州境に程近いリゾート地レイク・チャールズにあるカジノを訪れようというのだ。テキサスは、全米の中でもアラスカに次いで第二位の面積を誇る巨大な州であり、同じ州の中でも、例えば、西側のニューメキシコとの州境に近いエルパソまでは、Interstate Highway 10をひたすら西に10時間はかかる。他の主要都市であるダラスにしても、北に4時間程運転しないとたどり着けない。

その点、レイクチャールズはヒューストンから同じInterstate Highway 10を東に2時間30分であり、州都オースティンまで行くのとほとんど変わらない距離にある。ヒューストンがテキサスのかなり東側にあることを再認識させられた瞬間だ。これまで飛行機では他の州に行ったことは何度もあっても、陸路で州境を超えたことのなかった僕は、アメリカの州境とはどうなっているのだろうと少し期待していた。それでなくても退屈な百数十マイル一直線の運転には、多少の楽しみは必要というのものだ。

しかし、テキサスの東側で最後の大きな町バーモントを越えてしばらく進んでも、道沿いの植物の背が少し高くなったと感じる以外は州境を示す標識らしきものは見当たらない。何の感慨もなくルイジアナに入ってしまったことに少々がっかりした僕は、すぐにその認識を改めさせられることになる。道の左右にある大きな建物の屋根に、大きな字で「CASINO」と書かれていたのだ。そう、テキサスでは非合法であるカジノがある以上、ここはもうルイジアナなのである。目的としていたレイクチャールズはもう少し先なのだが、そこまで待ちきれないせっかちなテキサス人たちの所持金を少しでも飲み込もうと、巣で獲物を待つ蜘蛛の様に待ち構えているのである。ここでも、2つの世界の境界はカジノだったのだ。

そして、目的のレイクチャールズのカジノ。チャールズ湖の水面にかなり高くかかった橋から見えるその建物は、内部にひしめく人々の一攫千金を狙う欲望を反映しているかの様に外からでも怪しく光っていた。内部に入ると、ほとんどの機械やテーブルが埋まっていて、深夜とは思えないもの凄い熱気だった。ジャックポットの大当たりに歓声を上げる女性、これまでの負けを取り戻そうとルーレットで一点に大きく賭けて更に泥沼にはまる男性、様々な人の姿が入り乱れている。カジノの看板であるポーカーのテーブルには、アジア系の大家族の姿が目立つ。まるで、ここが香港かマカオでもあるかの様に、老若男女が混じった一団がディーラーの手さばきに目を光らせていた。

豊かさや法律の異なる二つの世界の境界。恐らくカジノはその象徴としての一つの例に過ぎないのだろう。もっとアメリカの多様性が形作る陸の境界を見てみたい、そう思った瞬間だった。

lake charles b
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この記事に対するコメント

カリフォルニアとネバダの州境にあるレイクタホというリゾート地も全く同じ境界があるよ。カジノがあるのはネバダ州側だけ。州というのは原則的に国と同じなのだと、理解する瞬間だよね。

【2013/06/17 15:06】 URL | オーイシ #mQop/nM. [ 編集]


大石君、コメントありがとう!
ネバダ州というとラスベガスが有名だけど、カリフォルニアとの州境にもカジノがあるんだね。色々な意味で、州というのは一地方というにはあまりに大きな差異と権限を持っているよね。
【2013/06/24 07:22】 URL | タツヒコ #- [ 編集]


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アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する商社マンです。

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