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午後23時、アメリカ南部にて
アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する筆者が当地にて感じた様々な事柄をお伝えします。
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「文化と食」の都市ヒューストンと呼ばれて
少し前の記事になるが、ニューヨークタイムズが"The 46 Places to Go in 2013"と題して、今年最も訪れるべき世界の観光スポットを、ベスト46のランキング形式で選んだ記事の中で、ヒューストンは全体で7位(アメリカの都市の中では最高の順位)に選ばれていた。普段海外からお客さんが来るたびに、観光プランの作成に困る身としては、ヒューストンが世界7位のホットな観光地というのは少々驚きだ。同記事の説明では、ヒューストンは一般的には「エネルギー産業の中心」として知られていることを認めながらも、ヒューストンが注目すべきスポットである理由として、この街が新たに、アメリカの「文化と食」の中心になろうとしていると述べている。

↓元の記事はこちら
http://www.nytimes.com/interactive/2013/01/10/travel/2013-places-to-go.html?_r=0

文化という意味では、ブロードウェイや、メトロポリタン、MoMA美術館を有するニューヨークがある中で、アメリカの「文化の中心」になるというのは、あまりにおこがましい気がしなくもない。ただ一方で、自分自身の感覚としては、ご当地びいきを別としても、全く的外れでもない気もする。何しろこの街には、シェールガス革命で活気を取り戻したエネルギー産業からもたらされる富が蓄積され、絶え間なく新しい人口が流入している。古今東西、金と人が集まるところには、文化も花開くというのが道理というものだ。以下でその具体例を少し見てみよう。

ヒューストンがエネルギー産業の中心であったのは、何もシェールガス革命に始まったわけではなく、20世紀初めに近郊に油田が見つかって以来、世紀を超えてエネルギー産業を牽引しつづけているのであり、そして、そのオイルマネーの一部もまた、昔からアートに向かっていた。冒頭の記事でも触れられていて、常に新しい文化施設が建ち続けるエリア、Houston Museum Districtの一角に、その営みの初期の証拠である美術館、Menil Collection(メニル・コレクション)はある。

初めての人はおそらく正しく発音できないSchlumberger(カタカナでシュランベルジェに近い発音です)は、業界の人には余りに有名な、フランス起源でヒューストンに本社を有する世界的な石油サービス企業だが、第二次大戦後の1940年代後半にヒューストンに移り住み、夫が同企業の重役となったジョン・メニルとドミニク・メニル夫妻は、ビジネスの傍ら、精力的な美術品の収集を続けた。現在夫妻のコレクションは、メニル・コレクションという無料の美術館として一般に公開されている。20世紀のシュールレアリスムや、現代アート、またそうしたアートに属するアーティスト達にインスピレーションを与え続けた古代美術やアフリカの美術に関する収蔵品は豪華の一言で、シュールレアリスムでは、ピカソや、デ・キリコ、ルネ・マグリット、現代アートでは、アンディー・ウォーホールやジャスパー・ジョーンズなどの有名どころの作品が惜しげもなく並べられている。

そして、最大の見所は、美術館に隣接して建つ、ロスコ・チャペルで、抽象表現主義の代表的な画家で、夫妻の友人でもあったマーク・ロスコ(Mark Rothko)が製作した八角形の建物だ。プロテスタントからカトリックに改宗したドミニク・メニルの意向も反映してか、建物は、「特定の宗教に帰属しない神聖な空間」と位置づけられているのだが、ロスコの巨大な壁画に囲まれたその内部に座っていると確かに、もし「どの宗教にも属さない、形而上的な「神」と呼ばれる存在に近づける場所」があるとしたらこういう場所なんだろうと思わせる、静謐で厳かな雰囲気が漂っている。

menil.jpg

一方で、何も仰々しい美術館芸術だけが「文化」なわけではなく、常に外部から移民を受け入れ続けるこの都市にあって、出自を問わず万人が楽しめる文化もある。難しい背景知識もいらず、歌とダンスで誰もが幸せになれる舞台芸術、ミュージカルだ。

夏の間、都心のハーマン・パークの中にある屋外劇場ミラー・シアターでは、無料でミュージカルを中心とした舞台が開催されていて、僕は先日ブロードウェイの古典的名作、コーラスラインの公演を見に行った。8時15分から始まる公演は11時過ぎまで続くのだが、普段10時過ぎにはほとんど街からいなくなるヒューストンっ子たちが、大きな会場を終演まで埋め尽くし、臨場感あふれるオーケストラの演奏もあり、最後まで熱気に溢れていた。

この作品は、様々な人生を歩んできたダンサーたちが、30歳前後のキャリアの曲がり角を迎える中、それでもダンスがしたくて、結局脇役でしかないコーラスラインのオーディションに必死に取り組むというストーリーで、日本でも劇団四季の重要な演目になっている。ただ今回改めて見てみて、同性愛者や黒人、中国やプエルトリコからの移民などのアメリカ社会のマイノリティーが、その逆境を乗り越えて夢をつかもうとする姿は、やはりアメリカに住んでこそ本当に理解できるのだと感じさせられた。

特に今でこそ傑作だと思えたのが、常に明るいジュディが出身地を問われ、「私はテキサスのエルパソ生まれなの!」と高らかに叫んだ時、会場から大きな拍手が沸き起こったことだ。1970年代の初演時、ブロードウェイでの公演を意識して、このセリフは「田舎のテキサスの更にド田舎」という意味合いで作られているはずなのだが、時を経て、この瞬間にテキサスのヒューストンで語られる時には、「発展を続ける我らがテキサスの出身」ということで、自信を深める住民のテキサスへの誇りを更に鼓舞しているのだった。

そう、ヒューストンがもし本当に、「文化の中心」であるとするなら、メニル夫妻の様なパトロンが必要である一方で、一人ひとりのヒューストン住民がヒューストンの文化的資産を自らのものとして楽しみ、育てていく意識が欠かせないだろう。そしてその意味では、ヒューストンに住む僕もその営みの一員なのだ。そこで、基本的に自己満足なこのブログが、少しでも「文化都市ヒューストン」を浸透させることに役立つことを信じて、このテーマは定期的に書いていきたい。

ところで、「食」については、またの機会に…

miller2.jpg


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アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する商社マンです。

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