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午後23時、アメリカ南部にて
アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する筆者が当地にて感じた様々な事柄をお伝えします。
10 | 2018/11 | 12
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INTERESTING TIMES
皆さんはアメリカのヒューストンと聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?NASAのある街、石油ガス産業の街、カウボーイのいる街、人によって印象は様々かと思います。ここに住んでいる僕らからしてみても、シェールガスブームで沸き返る街、アメリカ最大の先端医療産業を抱える街、アメリカ3大スポーツのチームが全てある街、主要な舞台芸術の劇団が全て揃っている街、はたまた、全米で最悪の渋滞に悩んでいて公共交通機関が不足している街など、人によって色々な感じ方を持っていることでしょう。

でも、ここヒューストンには、表面に見えるそんな姿とはまた違った一面もあるのです。ヒューストンが誇る名門大学であるライス大学のキンダー都市研究所に所属する社会学者、ステファン・クリンバーグ教授の研究チームは、1982年から30年間に渡り、ヒューストンの経済的、そして人口動態的な変化を追い続け、それによってより深いレベルでヒューストンが抱える課題、そして、その裏返しとしての可能性を明らかにしようとしました。その研究成果を一本の短い映画にまとめたのが、「INTERESTING TIMES」です。詳しくはぜひ映画本編を見て頂きたいのですが、何かのきっかけになる様、ここで彼らの問題意識を簡単に紹介したいと思います。

一つ目の問題は高等教育へのアクセスと、貧富の差の拡大という問題。20世紀初め以降のヒューストンは、農業、牧畜業と新しい産業としての石油産業に支えられた街でした。かつて、ヒューストンの人々は、石油も含めた大地からの恵みに頼っていれば、自らの生計を立てることができました。しかし、現代に近づくにつれて産業が高度化し、単純労働については発展途上国に移転されていく中で、いつのまにかヒューストンにはブルーカラーの労働機会が無くなっていったのです。そして、高度情報化する社会で有利な職に就くためには、高等教育へのアクセスが決定的に重要になっており、教育機会を持てた人々と持てなかった人々の間で、加速度的に貧富の差が広がっているのです。

二つ目の問題は、高度産業に従事する人々をヒューストンに定着させるために、いかにこの街のQOL(Quality Of Life)を確保していくとかという問題。いかにシェールガスブームに沸きかえっているとはいえ、高度情報化するアメリカ社会の中で、ヒューストンの産業も決して石油ガス一辺倒というわけではなく、バイオ、ナノ、遺伝子等の先端作業が発達してきており、全米最大の医療産業コンプレックスであるヒューストン・メディカルセンターはその象徴です。そうした先端産業に従事する人々は、非常に優秀な頭脳を持ち、世界最高峰の教育を受けた、本来世界のどこででも働ける人材。ヒューストンが真に住みやすい(QOLが確保された街)でなければこの街に定着してくれず、それはこれからのヒューストン経済を左右する問題です。そこで、ヒューストンの産業界は、この街に100万本もの木を植え、沼地を公園に変え、最終的にヒューストンを緑溢れる街にしようというプロジェクトを始めたのです。

三つ目の、そしておそらく最も深刻な問題は、ヒューストンの民族構成の劇的変化という問題。20世紀初頭にこの街で石油産業が始まって以来、ヒューストンは長らくアングロサクソン系の白人が圧倒的多数を占める典型的な南部の街でした。しかし、1960年代の移民法改正、そして1980年代初めの石油ブームの終焉を経て、ヒューストンにはラテンアメリカ、アフリカ、アジアから多数の移民が次々とやって来ました。結果として、現在のヒューストンの人口構成としては、ラティーノの人口が白人よりも多く、その意味ではヒューストンでは今、アングロサクソン系の白人も含めた全ての民族集団が、アメリカ的文脈における「マイノリティ」なのです。そして、そうして増えた移民は必ずしもヒューストン経済に平等に参加できるわけではなく、特に、ラティーノと黒人の流入者の多くは貧困にあえいでいます。そして、アングロサクソン系の人口は日本に並ぶ様な極度の高齢化を迎えつつあり、ヒューストンの社会がこれから発展していけるのかは、こうした新たな移民人口をどう包摂し、誰もにとって機会均等な社会を作っていけるかにかかっているのです。

こうして、一歩間違えれば社会を揺るがしかねない複雑な問題を抱えているヒューストン。しかし、クリンバーグ教授は、中国語の「危機」という漢字を挙げて、今のヒューストンがアメリカの他のどこの時代、どこの都市よりも、「INTERESTING TIMES」なのだと締めくくります。なぜそうなのかはぜひ映画を見て確かめて頂ければと思います。

本日、ヒューストン在住の日本人、日系人の皆さんに集まって頂き、拙いながらもこの映画の上映会を開かせて頂きました。今日という日が、皆さんがヒューストンという街をより深く知るきっかけになっていれば、僕にとってそれ以上の喜びはありません。本当にありがとうございました!

↓INTERESTING TIMESへのリンク
http://kinder.rice.edu/InterestingTimes/
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アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する商社マンです。

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