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午後23時、アメリカ南部にて
アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する筆者が当地にて感じた様々な事柄をお伝えします。
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過去の終わりと現在の始まり / ヒューストンの中のインド
もう10年も前のことになるけれど、二十歳の時、思うところあって、インド、パキスタン、ネパールといった南アジアを何ヶ月か当てもなく放浪していたことがある。当時の僕は、考古学や古い時代の美術品が大好きだったこともあり、そうした歴史的遺産に溢れたインドは憧れの場所だった。また、ヒンドゥー教の聖地バナーラスを訪れた日本人旅行者達を描いた遠藤周作の名作「深い河」の影響もあって、ヒンドゥーの伝統を忠実に守り、まるで時が止まった様なインドに行けば人生が変わるんじゃないかといった期待も持っていた。

しかし、ニューデリーから始まり、リシュケーシュ、アーグラー、バナーラス、カルカッタ、プリーと悠久の大河ガンジス川に沿ってインドの歴史的名所を巡っていくうちに、僕の中には言い様のない違和感が芽生えていった。そして、人で溢れた北インドに少し食傷気味になり、デカン高原を越えて、西インドの近代的都市ムンバイまで来た時、その思いは決定的になった。そこで見たのは、近代的ビル群であり、スーツをしっかりと着こなすと同時に頭はかっちりターバンで固めたビジネスマンであり、日本と変わらずおしゃれに着飾った若者達だった。

ある夜、仲良くなったそんなムンバイっ子の若者の一人に、自分が思っていたインドと実際に体験したインドとの違いがいかに大きかったかを話してみた。すると彼はこんなことを言ったのだ。「いったい君はインドに何をしにきているんだい?もちろん永遠に時が止まった世界なんてここにはないさ。ここにあるのは、今まさに急速に発展しようとしている国。全てがすごい勢いで変わっていて、近い将来、アメリカや日本を追い越そうとする国なんだよ!」

今思えば、10年前のインドの若者としては典型的な、気持ちのいい自信に溢れた発言だったと思うが、当時の僕には衝撃的で心の底からはっとさせられる思いだった。それまで僕は、歴史的遺跡や古い美術品、総じて「過去」に目を向けていたけれど、その時、自分が最も「過去」を守っていると考えていたインドですら、多くの人たちは「未来」に向かってまっすぐに進んでいたことを実感させられたのだ。僕にとっては、その時が「過去」から離れて、「未来」を見据えながら、「現在」を生きようとし始めた瞬間だった様に思う。

そして10年後の今。幸いまだ日本を追い越すには至っていないけれど、インドは豊富な人口を背景に急速な経済発展を続けており、インドを「時が止まった国」とイメージする人はもうほとんどいないだろう。本国の勢いを背景に、ここアメリカにおいても、インド人移民は、教育レベルの高い歓迎されるべき移民として、広く管理職や専門職に従事しており、ヒューストンでも多くのインド人に出会う。特に最近は、ビジネスにおいてもインド人の取引先と関わることが多いのだが、一見こちらに理解を示している様に見えて、次第に自分の要求を押し出して行き、気づけばクリティカルな部分で彼らの要求を受け入れざるを得ない状況に導かれている彼らの交渉力には、毎回舌を巻いてしまう。

またヒューストンには、そうした豊富なインド移民人口に支えられて、良質なインド料理店が点在しており、インド料理好きにはたまらない場所だ。社会人になってからの6年半を過ごした東京の港区芝地区も、IT企業用の人材としてインド人住民が多く、インド料理店も多かったが、ヒューストンの味の水準はレベルが違うと思っている。特に、ヒューストンの南西、高速道路59号線沿いには、インド料理店や、インド系の貴金属店、服飾店などが立ち並び、ちょっとしたインド人街の様になっているエリアがあり、そこには、北インド、南インド、ベンガル、パキスタン、ネパールといった、南アジアのそれぞれの地域の味を代表するレストランに出会える。

特に、僕のお気に入りは、そのインド人街の中心に位置し、特にインド料理店が多く、駐車場まで香辛料の香りが漂っているモールにある「ヒマラヤ」というレストラン。ヒマラヤという名前だけれど、料理の内容はパキスタンや西インド系の料理や味付けが多い。そしてぜひ注文してほしいのが、下に写真を掲載したヤギ肉のビリヤーニー。香辛料と米、肉と野菜を一緒に炊き込んだ料理だが、いつもレジにどかっと腰を下ろしている店主によれば、この店の名物料理らしい。

日本人がインド料理といえば、真っ先にイメージするのはカレーだろうが、ビリヤーニーもインド全域、特に西インドでは非常に典型的な料理で、16世紀に中東から来たイスラム教徒がインドを征服し、ムガル帝国を建国した時からインドに広がった料理だ。ただし、ビリヤーニーはその後、インドやパキスタンの各地域で、食材や調理法が異なる独自の複雑な発展を遂げ、今では世界的に南アジアの料理だと考えられている。料理についても、インドの歴史は時が止まった歴史ではなかったというわけだ。

ビリヤーニーを食べながら、着々と変化を遂げていったインドの過去を感じ、改めて僕は「現在」を生きようと思っている。

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アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する商社マンです。

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