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午後23時、アメリカ南部にて
アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する筆者が当地にて感じた様々な事柄をお伝えします。
10 | 2018/11 | 12
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Lady SamuraiとLady Texan / アメリカ南部の中の女性
多分日本では今更な話題なのだと思うけれど、ヒューストンでは日本の書籍はなかなか手に入らないことを前提にして書くと、最近読んだ北川智子さん著の著作「ハーバード白熱日本史教室(新潮新書/2012)」には大いに感銘を受けた。タイトルの元ネタとなっている政治哲学者マイケル・サンデル教授と同じく、現在はハーバード大学で教鞭を取る北川さんであるが、学生時代にハーバード大学に短期留学して日本史の授業を受講した際、その授業で教えられる日本史においては、アメリカ人が大好きなサムライは山ほど出てきても、女性が一切出てこないことに大きなショックを受けたという。そして、「とにかくLady Samuraiは絶対にいたと思う」という強い思いを胸に抱いたのだ。

時を経てハーバード大学の教授となった北川さんが、学生たちに教えるLady Samuraiというアイデアは独創的かつ刺激的だ。彼女は、日本の中世において、武士階級の女性はサムライである男性の影に隠れていたわけではなく、「戦わずに強く生きた女性」として、独特の重要なポジションを持っていたと説く。それは歴史上の女性の女性らしさを強調するのでも、フェミニズムの様に男女同権的な立場を採るわけでもない。あくまでも武士階級の女性という存在に独自のアイデンティティーを見出そうとするのだ。例えば、豊臣秀吉の妻である北政所(大河ドラマ等では通常ねねという愛称で呼ばれる)は、自身が戦に赴くことはなかったものの、彼女の意見は秀吉と言えども尊重せざるを得ず、当時の大坂城やその城下町は秀吉とねねが一対になって統治していたと考えられるという。

世界的に極めて男性的なものとして認識される日本のサムライの世界。そこにLady Samuraiという独自の存在を持ち込もうという北川さんの考えはすごく魅力的だと思う。それでは、翻って僕らが住むここテキサスはどうだろうか。テキサスと言えば、日本のサムライの世界に負けずとも劣らず、伝統的に強い男性のイメージが目立つ土地だ。日本の皆さんには、カウボーイハットとブーツに身を包んだ筋骨たくましい男の姿が思い浮かぶことと思う。1836年の独立からの短い歴史の中においても、独立の英雄、オースティンやサム・ヒューストン将軍等、主な登場人物はほとんど男性だ。現在にしても、共和党ティーパーティーの急先鋒として頭角を現している政治家、テッド・クルスにしても男性である。

それでは、テキサスの歴史において女性はどこにいたのだろうか?まず、文化の世界のおいては、強く生きたテキサスの女性たちが浮かんでくる。

例えば、ドミニク・デ・メニル。第二次大戦の難を逃れてヒューストンに移り住んだ彼女は、夫でシュランベルジェの重役であるジョンとともに、ヒューストンを代表するフィランソロピストとして、美術品の収集と在ヒューストンのアーティスト達の支援を続け、文化都市ヒューストンの形成に大きく貢献した。現在でも彼女の業績は、ヒューストンを代表する私営美術館、メニル・コレクションとして輝きを放ち続けている。また、現代においては、例えばビヨンセ。1981年のヒューストンに生まれた彼女は、幼い頃から圧倒的な音楽的才能を発揮し、最初はデスティニーズ・チャイルドの一員として、後には「強い女性」のイメージを体現したディーバ・ビヨンセとして、大活躍を続けている。

それでは、歴史の主軸である政治の世界ではどうだろうか?その探求は未だ道の半ばだ。ただ先日、件のメニル・コレクションで、テキサスにもきっと強く社会をリードしていった女性、言うならばLady Texanがいただろうと思わせる一枚の絵画に出会った。ベルギー出身の現代アートの巨匠、リュック・タイマンスの絵画、"The Secratary of States"だ。ご覧の通り、ブッシュ政権時のアメリカの国務長官コンドリーザ・ライスの顔を描いた作品であるが、無機質で見る者に漠然とした不安感を感じさせる物が多いタイマンスの作品においては珍しく、表情にも色使いにも力強さが溢れている。

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ライスは同じアメリカ南部でもアラバマ州の生まれではあるが、黒人と女性という二つの差別と戦い続けて、国務長官にまで登りつめた。タイマンスが捉えた彼女の強固な意志は、南部社会という環境でも女性は強く生きられると感じさせ、更に言えばテキサスにもLady Texanはいるはずだと感じさせはしないだろうか。

ここ最近期せずして、日本で働く女性がキャリアを続けることの困難さを感じる出来事が重なっている。今の日本社会は女性が30代、40代にキャリアを続けていくには、絶望的な程に環境が整っていないと感じる。そして、それは日本社会にとって余りに大きな社会的ロスだと思う。一方のアメリカ。ライスと同じく元国務長官であるヒラリー・クリントンが次期大統領選を見据えた政治活動を再開するなど、Lady Americanはますます勢いを増している。現代のLady Samurai達が、女性としてのアイデンティティーを保ちつつ、最大のパワーを発揮する社会を作ることができるか、それは僕らがより真剣に考えなければいけない課題だと思う。
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アメリカのテキサス州ヒューストンに駐在する商社マンです。

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